休日の代々木公園は楽しい。色々なジャンルのアーティスト達がそれぞれのパフォーマンスで自分を表現し、笑いや感動を与えている。
そんな中でもひときわ目立つ大きな観客の輪。圧倒的な存在感で、歩いている人たちが、次々と吸い寄せられるように足を止め、じっと緊張した趣きで見つめている。
その先に居るのは、黒のとんがりマスクに大きなサングラス、ポータブルプレーヤーを肩から下げたちょっと怪しい風貌の男。
打ち込みの音に乗って全身でリズムを刻み、白いキャンパスに筆を走らせていく。
殴り書きにも見えるその筆先からは、どんどんとダイナミックかつ繊細な温かい絵が浮かび上がってくる。
「デキタァ〜〜〜ッ!」っと叫ぶ彼の声と共に周りの空気が一変。
緊張感から解き放たれる一瞬の間で、観客達が一斉に肩をなで下ろす。辺りいったいが歓声と拍手いっぱいに包まれていく。
この黒いトンガリマスクの正体はリズムぺインター、ユキンコ☆アキラ氏。
リズムペイント?聞きなれないその言葉は「音楽のリズムに乗って絵を描く」と言う本人が作り出した新しい表現スタイル。
路上での活動を中心に、さまざまなライブやイベントでパフォーマンスを繰り広げている。
「僕は絵描きですが、リズムペインターです。僕は思います。バックダンサーがいるように、"バックペインター"がいてもいいと!CDジャケットがなかったら寂しいじゃないですか?だからライブにもジャケットが必要ではないかと!これから新しいジャンルとして、確立したいと思います」
その言葉の通り2005年5月には『MTV THE SUPER DRY LIVE2005』 〜1万人の夢のライブ〜に参加。
あのAshanti、DREAMS COME TRUE、Jamiroquaiを始めとする豪華なアーティスト達との共演で、ライブのリズムに乗りながら、即興アートで表現した。
「1万人のパワーで弾けそうな代々木第一体育館が、表現したかった」という彼の作品は”夢の共演”と題され、中目黒PLATANO+ギャラリーにて開催された”ユキンコテン2005”(2005年6月19日まで)でも発表された。

ユキンコ☆アキラ氏のパフォーマンスに集まる観衆は幅が広い。性別・年齢・国籍なんかも様々で、ちょっと強おもての若者の集団から赤ちゃんを抱いたほのぼの家族、仲良さそうな老夫婦まで、ユキンコ氏を囲みひとつの輪が出来上がる。こんなに多くの人を惹きつける理由とは何だろう?
「ユキンコアートは路上で創って貰った。見てくれた人達の評価をその場で感じて、パワーにする。生の面白さや、緊張感とかを伝えたい。一緒に参加して、感じて欲しいです」
そんな彼は、パフォーマンスの中で「アナタを描きたいっ!」と称し、リズムにのって観客達を次々に描いていく。
描くのは、似顔絵では無く「心の目」で感じた人や物。インスピレーションを筆を介してキャンパスに乗せていく。
技術的才能もさることながら、モデルの表情が訴えかけてくるような、魂を感じる絵。
絵は、コミュニケーションの手段だという彼に、描いて欲しいという人は後を経たない。
ユキンコ氏の創りだす、独特の空気と時間、そして観客をも巻き込んでアートする絶妙の距離感が彼の魅力なのかもしれない。

絵を描き始めたのは画家である父親の影響だという。幼い頃から父親のアトリエで油絵の具の匂いや、画集を意味も分からず見たり触ったりしていた。
「絵を描くことが楽しいと思うよりも、絵を描くことで周りにいる人が喜んでくれるのが楽しかった」
描くことが自分の存在証明になっていたという子供時代。そんな絵画を身近に感じた生活のなかで、ユキンコ氏は東京藝術大学を目指すことになる。
「僕は6年浪人して、藝大に入ったので入学するまでは『夢の藝大』だったわけです(笑)でも大学での教育は技術的なことよりも、テーマやコンセプトだったので、"何のために何を表現するのか?"ということを厳しく問われた学生生活だった。浪人時代も辛かったけど、大学生になってからの方が数倍精神的に辛かったです(笑)」
大学に入学したものの、やりたいビジョンがはっきりしない。そんな時に出逢ったのが路上で自己表現をする人だった。自由で羨ましいなと思い、自分自身も路上でのパフォーマンスを始めることになる。
路上で絵を描き始めたユキンコ氏は、そこで出逢った人達と、クラブでライブペイントも始めるようになる。
「僕のやることは絵を描く表現だから、どちらかというと地味なので、ステージでスポットライトを浴びながらパフォーマンスする人を見て自分もあんなふうにステージで絵が描けたらなぁと思っていました」
子供の時から、ジャズやロックばかり聴いていたのでリズム感覚には自信があったというユキンコ氏はパフォーマンスとして発表しようと決意。ある程度イメージはできていたと言う。しかし、実際には思い通りにいかない。
試行錯誤の末、マーカーから、筆と絵の具に持ち替え、音楽に乗って描くようになり、リズムペインティングという
表現スタイルが誕生することになった。
「気持ちを込めて描くことや、作品を愛することは目の前にあるものにどれだけ心で感じて、そのものの、リズムに乗れるか?ということだと思います。ピアノ奏者が気持ちを込めて体を揺らしながら演奏しているように、絵描きだって、ものすごい気持ちの起伏がある。柔らかいものを描く時は柔らく、ゴツゴツしたものを描くときにはゴツゴツした気持ちでというふうに気持ちから乗り移って筆先に伝達しないと、つまらない絵肌になってしまうんです。だからリズムに乗って描くということは、感情移入の手段として、大切なアクションなんです。」
そんな彼が一番大変に思うのは気持ちのモチベーションを維持していくことだという。
「ユキンコ☆アキラ」は自分自身で創り出した作品だという。自分の中に眠っていた、もっと過激で、パワフルで、ヒーローで、あこがれるもう一人の自分。今ではどちらも自分だと思えるようになってきた。
「自分らしく生きることは、いろいろ障害もあります。でも、それを乗り越えて自分スタイルを確立した時本当の自由を手にいれることが出来ると僕は信じています。競争しない方法で、自分らしさを深めていく。ユキンコは長い時間をかけて溶けていく雪のように人の中にしみ込んでいくようなスピードが好みです。これがユキンコ流ライフスタイル。オモシロイと思うことを、自信を持って堂々とやって行きましょう。」
今後は、海外でパフォーマンスを発表したいと計画中。代々木公園でいろんな国の人達と出逢うので言葉の壁を乗り越え、伝わる実感はあるという。
百聞は一見に如かず!とにかく一度、ユキンコ☆アキラの世界に足を踏み入れてみよう。
梅雨もあけた代々木公園。冷たいビール片手に、アートとか芸術とか気難しく考えないで、「ユキンコ☆アキラ」という究極のエンターテイメントを生で味わう!
彼の叫ぶ、「デキタァ〜〜〜ッ!」を一度聞いたら、感動と幸せな気持ちいっぱいに包まれるはずです。