寄木細工職人 露木清高

寄木細工職人 露木清高

伝統工芸を継ぐ4代目

寄木細工職人 露木清高

 色や木目の異なったさまざまな木を寄せ合わせて細かい幾何学模様を生みだす寄木細工。箱根や小田原のお土産として見たことがある人も多いはず。細かい計算と精密な作業が求められるこの伝統工芸は江戸時代末に箱根ではじまり、現在は箱根・小田原地方が日本で唯一の産地だ。
 小田原で寄木細工を3代にわたって継承し続けてきた家に生まれ、現在、4代目を目指して職人修業をしているのが露木清高さん(26歳)。しかし「伝統を守らなければいけないという意識はあまりないんです」と言う。
「もちろん昔から伝わってきていることはとても魅力があって、尊敬しています。ただ、『伝統工芸は常に新しい可能性を考えなければだめになる』というのが社長(父)や先代(祖父)の考え方で、ぼくもそうだなと。伝統をふまえた上で、それをただ守るよりも新しいことに挑戦したいんです」
 実際、露木木工所から生み出される作品は小箱をはじめとする伝統的な工芸品だけではなく、ぐい呑みやろうそく立て、ペンホルダー、お箸、アクセサリなどさまざま。模様も昔ながらの(もちろんそれはそれで完成された美しさがある)柄だけではなく、モダンで大胆なデザインが多いのが魅力的だ。

工場ではいちばん下っ端

寄木細工職人 露木清高

 露木さんは高校卒業後、京都にある伝統工芸の専門学校で4年間、指物(木を使った箱や机、箪笥などの家具)の基礎を学び、卒業後、小田原に帰って家業の木工所で働いている。
「この仕事をするようになって3年半。10年で一人前といわれる世界ですからね。工場でもいちばん下っ端なので、雑用から配達、ありとあらゆることをやりながら先輩たちに交じって仕事を覚えているところです」
 職人としての修業だけではなく、将来の4代目としては経営的なことも学んでいかなければならない。
「いや、まだ何もわからないです。4代目になれるかどうかもわからないですよ。もともと高校を出るまで木工所を継ぐという明確な意志はなかったんです。ただ何かをつくることが好きで、だけれども器用にあれもできてこれもできてというタイプではなかったので、身近にあった寄木細工に自然な流れで入っていきました。よかったと思っています」

若手職人の作品展を開催

寄木細工職人 露木清高

「職人というと、何かきびしい徒弟制度のようなものを想像されるかもしれませんが、うちは会社になっているということもあって、そんなことはないですよ」
 しかし言葉ではなく「目で覚えろ」というのが職人の世界。技術は簡単には教えてくれないはず。
「ぼくはどんどん聞くんです(笑)。目で覚えろというのもよくわかるんですよ。見て自分で工夫しないと、いざというときに自分で解決方法を見つけられない。でも知らないままでいるよりは、疑問は聞いたほうがいいとも思います。父も基本的には教えてくれます。突き放されるときもありますが」
 昨年(平成16年)、小田原の若い寄木細工職人5人で「雑木囃子」というグループを結成。今年の10月に地元のギャラリーで作品展を開催した。
「ぼくを含めて若手がたまたま5人、同じ時期に各事業所に入ってきたんです。せっかくだから作品展をやろうということで、一年かけてそれぞれ作品をつくりました」
 NHKをはじめとする取材もいくつかあり、いちばん年長の露木さんが主に対応した。
「NHKさんのときは、もう(言葉を)かみまくって(笑)。敬語になったりタメ語になったり、何をしゃべったのかわからない状態でした。でも放送をみたらうまいこと編集してあって、すごいなと(笑)」
 そのおかげ(!?)もあって作品展は予想を超える大盛況。多くの入場者を集めた。
「感激しましたよ。自分たちの技術の向上と、若手の存在を知ってもらうのが目的だったのですが、寄木そのものを広く知ってもらうことにつながったとしたらうれしいですね」

「隠し蟻組」と「銀」

寄木細工職人 露木清高

 作品展にも出品した露木さんの作品で特徴的なのは、箱のつなぎに京都で学んだ指物の技法である「隠し蟻組(かくしありぐみ)」を取り入れたこと。そしてデザインに異種素材の銀をつかったこと。
「隠し蟻組はただ接着剤ではりあわせるのではなく、ほぞをつくって組み合わせる方法で強度が増すんです。もっとも普通のつなぎかたでも強度に問題はないんですけれどね。高級品ということになりますが、寄木細工はそうなりうる可能性があるとも思っているので、おもしろいんじゃないかと。まあ組んでしまえば外からは見えませんが」
 銀を使ったのはスペインの寄木細工の影響。
「日本とはつくりかたが違いますがスペインにも寄木があります。展覧会で見たときに動物の骨や金属を使ってあるのを見ておもしろいと思ったのです」
 日本の寄木細工は、木を寄せ集めて模様をつくったら、それを鉋で削って紙のように薄い木片にし、製品になる木地に貼り付けるのが特徴(ぐい呑みなどは別)。スペインの寄木のように最初から薄く切った木を寄せて模様を付けていく方式とは違う。日本式の寄木に銀を取り入れるのは簡単ではなかったはずだ。
「京都の学校時代に仲良くなった金工をやっている友人に技術的なことを相談しました。ものづくりに対する考え方が似ているんです。そのおかげでできたのですが、ぼくが最初につくったものは銀にうっすらと傷がついてしまって、金工を専門にやっている人に言わせれば許されないことだと。難しいですね」

まずは一人前になること

寄木細工職人 露木清高

「作品をつくっているときには失敗したらどうしようと、どきどきしながら手を動かしています(笑)。新しいデザインや配色を考えるのも難しいですね。その点、父は新しいアイデアがいつもあって、尊敬しています。銀を取り入れるときも父にアドバイスをもらいました」
 寄木細工は日用の必需品ではないため、近年は販売数が減少しているという。
「自然のままの木の質感と色をいかした寄木には独特の魅力があります。日用品をはじめとするさまざまなものへの応用、そして新しいデザインの可能性はもっとあるはずなんです。原料になる木材の確保が難しくなってきているのは心配ですが。寄木細工の魅力が広まって、どんどん新しい作品をつくっていけたらいいなというのが理想、夢です。ただし、そのまえに一人前の職人になること。まだまだ先ですね」


■information
露木木工所の作品はギャラリーツユキで展示販売されています。
http://www.yosegi-g.com/main.html

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