私は「大丈夫」って言いたい。本当に大丈夫なの。

果てしない先のことを考えてもしょうがない

橘いずみ橘いずみ。68年兵庫県生まれ。92年に『君なら大丈夫だよ』でデビュー。94年にリリースした『永遠のパズル』がテレビドラマの主題歌になるなど、その後もヒット曲を生み出し続ける。今年、デビュー13周年を迎え、ますます輝き続ける36歳の素顔を追った。

デビューから13年たって

ピッチ良く話始める橘いずみさん
●13周年、おめでとうございます。感想は?

 ありがとうございます。節目的な数字ではないけど、10周年のときとはまた違う思いがありますね。そのときは、振り返るモードじゃなくて、「やるぞ!」みたいな感じだった。今は、昔を振り返るのと先に進む気持ちとのバランスがよくて、余裕がある。年齢をかさねて、いろんなことを経験するんだけど、自分の気持ちの中では、もっとピュアになろうとするっていうか、邪念を消そうっていう風に進んでいる感じ。昔は、歌詞にニュアンスを出そう、とか考えたりしてたんです。でも今は、出てくるものはとにかく何でも出そう、って。実は、それが一番難しくて、「ちょっとまって、そこは恥ずかしい」っていう安全弁が閉じてしまったり。今、それを取り払うためにいつも苦闘してます。

●自分のイメージに縛られないように?

 自分のパロディじゃないけど、こういう風にしておけば楽だろう、っていうのがあった。一つのことを組み立てるのって難しいんですけど、組み立てたものを壊す方がもっと難しいし、勇気もいる。でも、実態がないものに縛られるとか、自分の器を常に自分で決めちゃうとか、馬鹿らしいでしょ。本当はもっと器が大きくなっているのに、それを上から自分で押さえていたりする。

自分を見つめるということ

たくさんの表情を見せてくれた橘いずみさん
●そういう風に思うようになったのは、きっかけがあるんですか?

 「どう? どう?」って外に聞いてばかりいて、混乱しちゃった時期があって。結局、何事も自分の中に問いかけないと、答えが出ないと思うんです。自分の中のほうが深いんですよね、外よりも。だから、自分のふたを自分で開けてあげる。テレビでよく見るような、20代の女の子がやるべきこととか、するべき格好とか、そういうのは無意味。自分のやりたいことをやればいい。でも、人に「ばかじゃないの?」って言われるようなことを思い切りやるには、自分の中に問いかけないとできないと思うんです。私ね、テレビを捨てたの。そうしたら、ものすごい楽になっちゃって。

●いらないものが入ってこない?
身振りそぶりでしっかりと話す橘いずみさん

 テレビって、こうあるべきだ、っていう情報があふれているような気がして。それこそ、ワイドショーなんて主観のかたまりでしょ? 「世の中こうしなきゃいけない!」みたいな。でも、実際に人と会って、話をしてみたら、みんなそんなに世の中を憂いていない。あれ、テレビで見てたのとちがうじゃないか、って。情報に踊らされているんですよね、無意識に。特に、自分を変えたいって思うときは、できるだけそういう情報から遠ざかってみた方がいい。自分のフィルターを通して情報を摂取するの。それと、自分を自由にしてあげる。友達と一緒にいて、いやだな、って思ったら、理由を考えてみる。そうすると、疲れているとか、相手が嫌いとか、色々でてくる。で、じゃあ好きになってみる? とか、やめてしまおう、とか選択ができる。発想の根元を紐解いてあげると、自分というものの側面が見えてくると思うんです。

30代だからできること

●30代から始めたことってありますか?
暑い外でも元気いっぱい

 バイクかな。31歳の誕生日の次の日に、友達と勢いで免許を取りに行ったの。それ以来、はまっちゃって。乗っている間、頭が空っぽになるんですよね。「気持ちいい!」とか「最高!」とか、感嘆符ばっかり(笑)。その感嘆符人生のおかげで、頭主導より体主導で考えるようになりました。大切なことって、意外とシンプルだったりする。でも、百の言葉を並べるより、簡単な言葉で説明できる人のほうが、重みがあったりするでしょ。歌詞を書く上でも、そういう“裸の言葉”を使うのは勇気がいることなんだけど。

●飾り立てる方が安心する?

 そうそう。昔は辞書を見て韻を踏める言葉を探したりしてたんです。でも、今はそんなことをしなくても蓄積があるから、組み合わせるだけでいい。30代って、組み合わせの年代だと思うんです。もう十分、いろんなことを経験してきたから、あとはその経験を生かしていろんなことを判断する。みんな、自分のなかにこれだけのものがあるっていうのが信じられないんです。でも、ちょっとしか入ってないと思う人も、実はわんさか入れてるんです。それに自信を持つことが一番重要。私は「大丈夫」って言いたい。本当に大丈夫なの。

●でも、ふと不安になるときってありませんか?
どん調子をあげる橘いずみさん

 将来のことを考えるとね。時間軸っていうのが一番怖いの。未来があって、過去があって、今がある。でもね、未来なんてまだないんです。今しかない。今、今、今、今、今・・・・・・で未来がある。果てしない先のことを考えてもしょうがないんです。自分の気持ちって、一瞬一瞬で変わってくるでしょ。例えば、大好きな彼との別れは辛い。でも、本当に別れることになったとしても、その直前の時点で理由になる選択肢があるんです。今の自分と、その先の時点での自分は違うんだから、その先の自分に対して痛みを感じることは、ものすごく無駄なこと。だから、今の時点で、どうしたらいいかを考えるのが大切なんですよね。今しかないんだから。今、色々悩みを抱えている人は多いと思いますけど、そう考えれば少し楽になるじゃない? 頭でっかちにならずに、今を生きる! それが人生を楽しむ秘訣かなって思うんです。

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