Atelie-Opa

靴職人として嘘をつかないこと

オーダーメイドのススメ

笑顔が人柄を物語る春日氏

 「足が小さくて…(悩み)」「トゥが丸くて〜、ヒールは低くて〜(要望)」「なんでヒールはすぐ直してもらえるのに、サイズとかは直せないの?(疑問)」なんて靴のトラブルお持ちのお方。靴のトラブルバスターがお応えします!0120-092×-092××(クツー-クツー)までいますぐどうぞ! なんていう靴のトラブルセンターがあれば…って思った人もいるのでは? 顔同様、足だって三者三様、一人一人違うもの。しかも、足って手や顔と違って、「靴」という履きものと毎日一緒に生活をする。だからもっと厄介。でも、解決方法はすぐ身近にあるんですよ! それが靴のオーダーメイド。ないものは頼んで作ってもらえばいいんじゃな〜い? サイズでお困りの人は、足型を取ってもらい、ジャストサイズなものを作ってもらう。デザインでお困りの人は好みのデザインの靴を作ってもらう。この超難題をクリアしてくれる、シューデザイナー兼クリエイターが『Atelie Opa』の春日幹生さんだ。
“OPA”とはポルトガル語でビックリしたときに使う言葉。いつもの生活にちょっとだけウキウキ、ワクワク、足元が軽くなるような意味を持つブランド名。まるで春の匂いを嗅いだときのような、あの感じ。

かっこいい靴・・どんな靴?

靴の話となると真剣に語る春日氏 「実家が靴屋だったので、子供の頃から靴に囲まれた生活をしていました。19歳ぐらいから真剣に靴の世界に入ろうと親元で修行を開始。まず小売店まわりなどで靴業界を知ることからスタート。いろいろな小売店をまわってみて、かっこいい靴がないな、と自分でデザインをスタートしました。始めはデザイン画だけだったのですが、23歳のときに初めて1足を完成させました」
靴の世界への入門はスムーズに開始。しかし1足完成させたことで初めて壁にぶつかった。「この1足がすごく大変でしたね。思い描いていたデザインを立体にする難しさを知りました。何より難しかったのはパターン(型紙)。もう、わけわかんなかった。 全然思いどおりにいかなくて、パニック状態(笑)。平面から立体にするのってこんなに難しいんだーって。しかも足にフィットして動くものですからねぇ……」でもこの一足でパニックになったものの、自信がついたのも事実。春日さんはそこから靴の魅力をどんどん知ることになっていく。

初めてのオーダーメイド

実際の製造過程を見せて貰った

 そんな時に登場したのがオーダーメイドを熱望する女性。「工房にやってきた女性が、「この靴、すごく気に入ってるんだけど今はもう売ってないんです。だからこれと同じようなのを作ってください!」って言ってきたんです。それがオーダーメイドの始まりですね。正直言うと本当は嫌だった(笑)。でも情熱がすごかったから引き受けました。そのときは依頼者の注文どおりの靴の複製のような仕上りにしましたよ。それが要望でしたから。でも納品したらすごく、すごく喜んでもらえたんです。それが今までで体験したことのない嬉しさでしたね」

オーダーメイドだから出来る事

作りながらも取材陣にも気を使う

 これをきっかけに自分のブランドと同時進行でオーダーメイドの受け付けを開始。オーダーメイドといっても「フルオーダー」「セミオーダー」の2パターンがある。サイズで困っている人、1点物が欲しい! と悩んでいる人、もしくは本当に作りたいデザインのある人は「フルオーダー」を。実際に工房に行き、足型を採寸してから、革や形を春日さんと相談。「フルオーダー希望の人はオーダーの際、困っていることはすべて言ってください。サイズの問題、素材の問題、デザインの問題などなんでも。ここでしっかり言ってくれないと仕上りのイメージが食い違ってくるんです。足の形で問題がある場合も言ってください。例えば足に腫れ物がある人。腫れ物のある部分に革を張ればある程度カバーできます。一緒に解決の方法を相談しながら打ち合わせしていきましょう。ある程度のことは実現できますよ」とまるでドクターのような力強い一言。自分の1足を明確にする。それを元に春日さんが簡単な革でサンプルを作成。出来上がってから再び工房に行き、サンプルチェックをして問題がなければ本番用の革で実際に作成していくという手順に。東京から遠距離に住んでいる人や、行く時間が無いなんて人も心配することなかれ。足型採寸セットや説明書が送ってもらえるので同じように作ることができますよ。 しかし、足の問題ではなく、デザイン的なオーダーの場合はどこまでが実現可能なのだろう? 「雑誌、カタログなどを見て作るのもできます。雑誌を持ち込む人もいますからね。なかには自分でデザイン画を持ち込む人もいる。でもそういうデザインは、実際に立体にしたとき、すごい形になることが多いんです。だから打ち合わせ、相談を緻密に行っています。自分のデザインと違って、人からのデザインは注文者・依頼者の満足度で良し悪しが決まるので。そこが一番おもしろいんですけどね(笑)。いかに自分の作ったもので満足してもらえるかが大切だから、立体勝負を依頼者としている感じです」

創り出すオリジナリティ−

力の入る張り合わせ場面

 次に「セミオーダー」。 セミオーダーの場合はすべて工房に用意してある型見本からデザインをセレクト。色や素材は好みのものを選べることができるので、満足感はフルオーダーに負けないくらい味わえる。セミオーダーの場合は革の固さを特に注意するそう。「革の固さが歩きやすさにつながりますからね。革は見本を常時80種ほど用意。そこから選んでもらいます。もちろん裏地もオーダーできますよ。革のバリエは豊富なのでオリジナリティーが増します。あとはゴム底か厚みなどで違いを出すことかな」 セミオーダーも工房に来られない遠距離在住の人は工房に問い合わせればオーダー可能。このサービス感がオーダーメイドの高級感をより高めている。
オーダーしてから完成までは2ヶ月ほど。 「慌てると失敗しちゃいますから。じっくり作っていくことで注文者の望むものを作るようにしています。 なるべくがんばって速度は上げているので焦らずお待ちください(笑)」 靴職人として「嘘をつかないこと」。を一番大切に考えるという春日さん。 当たり前のことができる、柔軟な思考の持ち主の彼に一度自分の足を任せてみたらどうだろう? きっと毎日出かけるのが楽しくなるはずだよ。だってだって「OPA!」だもん! 

春日さんは職人としてまだ若い。その点は否めない。皺でくしゃくしゃのおじいちゃん職人が革張りをしていたら、その方がオーダー側はなんだか嬉しくなってしまう部分があるだろうし。第一ライターの私がそう思ってしまっている……。 しかしだ。春日さんは職人としてより、今、オーダーに対して受け入れるキャパが大きい。可能性と発想力が無限に広がっている。春日さんの発想力はそこをうまく救いとってくれるのだ。そして春日さんの話を聞くとき、するときのかわいらしさ。職人に必要な(と私は思っている)キュートな部分を取材時に感じられたのが最大の収穫だったと思う。これだけで私はオーダーしようと心に決めた。<ライター:山本久美>
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